PARTNER 1 0
 
全身が、だるい。
ぼーっとした頭で、ぼんやりと視界の隅に入る小早川の姿。
ぼんやりとした輪郭が、徐々に近づいて来ると、くっきりと形を現わし、目の前には切ない表情の彼の顔があった。
何かを必死に我慢したようなその表情に浮かぶ色香に、思わず涼子は見惚れてしまう。
「ん…」
そのままゆっくりと唇を塞がれる。
もう何度めかもわからないキスの嵐に、どこか慣れてしまった自分がいた。
少しづつ、受け入れてしまっている――――――。

「!」
危うく流されそうになっていた涼子の意識を引き戻す、その感覚。
下腹部に大きな違和感を感じる。
ぷちゅ…
小早川の指が、ゆっくりと涼子の中に入ってきたのだ。
「ぃやっ!」
慌てて身を捩るが、腰が僅かに逃げようとしても、小早川の指は腰の動きに合わせて付いてくるばかりか、更に涼子の奥へ奥へと侵入を果たしてくるのだ。
「痛い?涼子さん…ごめんね。ちょっとほぐさないといけないから、もう少し我慢して」
指を付け根まで沈め込んだところで、涼子の奥に処女の証であるそれの存在を確認し、小早川の口端が自然と吊りあがった。
この女性の全てを初めて奪うのが自分である事に、今まで感じた事のない優越と喜びを感じる。

全て呑みこまれた自分の指で、ゆっくりと優しく掻き回し始める。
「っ…!」
涼子にはもう、表情でしか抵抗できない。それくらい、力がもう入らなくなっている。
苦しげに顔を顰めて、悩ましげな吐息を吐きながら、唇を噛み締める。
下腹部から、全身に広がる違和感。快楽でも痛みでもないそれは、初めて味わう感覚で、身体が何と認識して良いかわからない感覚。ただ、辛い事だけはわかった。
涼子の表情から、小早川にもそれが見て取れた。だからこそ、まずはゆっくりこの感覚を馴染ませ、身体がきちんと快楽を感じるようになってから、彼女とひとつになりたいと、そう願う。

彼女の初めての男になるのであれば、痛みも、極上の快楽も与えられるのが自分だけであって欲しい。
この先涼子を誰かに渡すつもりはさらさらないが、涼子の事だ。万が一、今回きりの事にされたとしても、もう他の男では満足できない身体にしてしまいたい。
何度イカせても足りない。彼女が壊れるくらい抱いて、もう二度とこんなに激しく彼女を抱く男はいないくらい、滅茶苦茶にしてしまいたい欲望が頭をもたげる。

「はっ…うぅ……はぁっ…………ぁっ…」
涼子の声が、僅かに桃色がかった事、彼女の腰がぴくんと小さく跳ね上げたのを小早川は見逃さなかった。
あせらず、ゆっくりと指で律動を続ける。
「……ぁ………ぁ………」
もう時間の問題なのは明白だった。待ちきれなくて、彼女の乳房の蕾を口に咥え、強く吸い上げる。
「あっっっ!や、あっ、あ…!」
無理矢理でもいい。彼女の身体全体から快楽を引きずり出したい一心で、愛撫を強くすると、涼子の下腹部が再度熱く震えた。今までも感じた下腹部の欲求を満たすように、小早川の指が蠢く事で、カっと火が灯いたように膣の中からどんどん愛液が零れてくる。
「あ、あ、あ、あ、あっ」
「すご…どんどん溢れてくる…涼子さん、気持ちイイ?」
乳房から唇を離し、小早川は涼子の顔前に戻すと、じっと彼女の感じている表情を見つめながら囁いた。
「もう一本増やすね…」
言いながら、中指に加えて人差し指も彼女の中に侵入させる。
「あ、やっ…あっあっ」
「キツい?でも我慢してね……後でもっと大きいのが入るんだから……」
「くぅっ……冗、談っ……あああっ」
「ん。ここがイイの?」
少しづつ慣れてきた涼子の中をほぐしながら、弱い所を探っていた小早川だったが、彼女の奥に近いある場所を突くと、背を仰け反らせる反応を見逃さない。
「あ!だめっそれだめっ…あ、あ、あ…」
「涼子さん、かわいい…」
ちゅ、ちゅ、と啄ばむように口接けながら、涼子の中を指でたっぷりと楽しんだ小早川は、一通り彼女の弱点を把握すると、すっと指を引き抜いた。

「涼子さん……俺…そろそろ限界……」
「な…に………ひっ!!」
指の代わりに、彼女の入口にあてがわれた異物。
それは、小早川自身だった。
「もうさっきからずっと…涼子さんのナカに入りたくて、おかしくなりそ…」
「やっ!こばやかわっ!」
ゆるゆると、入口を弄る彼自身の強張り。
犯される――――――――涼子は背筋がひやりとするのを感じた。身体は全身だるいままなのに、頭の中だけ妙に冴えてくる。
「小早川!よく考え直して!今ならまだ…」
「今なら?もうとっくに、引き返せない所まで来てんだよ、涼子さん…俺たちの関係は、もう昨日までのものじゃない。涼子さんはもう、俺を男としか意識できなくなったでしょ?」
「…」
図星だった。もう涼子には、小早川がただの部下には思えなくなっている。
では、何なのだろう?彼に対する自分の想いは。
恋とか愛とかは、涼子には正直よくわかっていない。でなければ、この年齢まで恋人がいないような人生は送っていなかったと思う。

ただ、男に負けたくないだけ?

違う―――――最初から男なんて相手にしていない。

男なんて必要ない。自分は自分で、一人でも強く生きられる。

強く、気高く、一人で完璧の存在。

それが、自分。上村涼子のはずだった。


それなのに。


目の前の男は、そんな完璧だった自分を簡単に崩した。
自分の不完全さを見せつけられたばかりか、守っていた他者との境界線を、勝手に破って入ってくる。

むかつく。むかつく、むかつく――――!

なのに何故。彼に触られる事が、心の底から厭ではないのは?

彼に感じる憎らしさと同時に込み上げる、胸がぎゅっとなる気持ちは、何なのだろう。
身体の奥底が疼いて、理性を手放すと、危うく求めてしまいそうになる。


「…涼子さん?」

小早川の呼ぶ声で、はっとする。

「本気で、もうこれ以上我慢できないんだけど・・・」

小早川の強張りが、先程から涼子の入口を愛撫しながら、隙があれば今にも刺されてしまいそうな危うさに、身体の奥から、ちりちりと電流が密かに火花を散らす。

「…っっ…」
先程から声を押し殺し、苦しげな表情の涼子の顔を両手で捕まえて、真剣な顔で小早川は囁いた。

「涼子さん、俺を受け入れて?……あなたのナカに、入ってもいいですか?」

今までで一番、切ない小早川の表情。
彼のこの願いを拒絶したら、泣いてしまうのではないかと思う程、それは儚さを持っていた。
ここで拒絶すれば、今なら、諦めてくれそうな気がした。
それをずっと願っていたはずなのに。
切なくも真剣な表情の小早川を見て、躊躇してしまう自分がいる。

ここで、一生小早川を失うか、彼を受け入れるのか。

今の涼子には、どちらも選べない、どうしていいのかわからないでいた。

「涼子さん。ここまで無理強いしたし、ズルイのはわかってます。でも…最後はちゃんとあなたの了承を得て、あなたと溶け合いたい」

小早川はそう言うと、ゆっくりと涼子の唇に口接けた。ただ優しく愛おしむように、啄ばむだけの接吻。
大きく切ない吐息を吐きだし、再度口を開く。

「これが…最後です………涼子さんののナカに、入ってもいいですか?」

沈黙すら、許して貰えない。ここで答えを出さなければならないのだろうか。
先までのように強引に奪えばいいのに。
そこまで考えて、涼子は気付いてしまった。自分が、小早川を求めている事に。

「……………てに…」
「え?」
「…勝手にすればっ…」
頬を赤らめたまま、ぷいっと顔を背けて涼子は小さく呟いた。
その答えに、小早川は目を丸くして、暫しの間呆けていた。
「は……くっ…くくくっ…ははははははは…」
掠れた、どこか自嘲気味な笑い。
「最後まで、涼子さんらしいや…」
そう言って目を細める彼の瞳は、じんわりと滲んでいた。

「…最後って何よ」
「涼子さんが処女の最後の瞬間?」
「ちょっと処女じゃないってっ…きゃぁっ」
ぷちゅ、と音を立てて、小早川の先端が、涼子の内部に侵入する。
「それじゃ遠慮なく…勝手にさせてもらいます」
「やぁっ!ちょ…あっ…いっっ……」
先程の小早川の指によってほぐされた涼子の内部はしかし、まだ彼自身を受け入れるには至らず、ぐっと捻じ込まれると異物感と痛みがこみ上げてくる。
「うぐっ…いっ…」
痛い、という言葉を呑みこんで、歯を食いしばる。
苦痛に顔を歪ませても尚、意地を張っている涼子を見て、小早川はこれ以上ないくらい愛おしさが込み上げてきた。
弱いところを見せないように必死で我慢する彼女が可愛くて、痛みを与えてしまっている事に申し訳なさを感じつつも、それどころではない喜びが小早川を支配する。
「涼子さん、ごめんね…痛いのもう少し我慢して」
「くぅっ…」
小早川の囁きも、涼子には届いていなかった。否、届いていても言い返せる気力が湧かない程、彼女は必死だった。
少しでも涼子に痛みを与えぬよう、慎重に、ゆっくりと小早川は進んだ。
「き、つ……涼子さん、力抜いて」
狭い涼子の中は、小早川にはかなり刺激が強く、痛みに追い出そうと力んでしまう涼子に嫌でも締めあげられ、このまま到達した途端、高みに昇ってしまいそうだった。
やがて、処女膜らしき窄みにいきつくと、一度動きを止める。
このまま貫いてしまった方が彼女にとっても楽かもしれないが、噛み締めている唇が気になった。
少しでも力を抜かせるよう、彼女の両胸を愛撫する。
「あぅ……あ、あんっ」
優しく彼女の蕾を甘噛みすると、彼女の中の力が少し緩むのがわかった。そこを、一気に貫く。
「ああああああああっっっ」
弓なりに反る涼子の肢体を強く抱きしめて、彼女の中に入り込んだ。
「やっと……ひとつになれた」
引き裂かれた痛みに、呆然とする涼子に接吻の雨を降らせながら、小早川はひとりごちる。
「これで涼子さんは、俺のもの―――――――」


やがて外は、いつの間にか陽が沈み、紅い月が昇ろうとしていた。
 
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